ONK・しあかんE-Factory Presents トライアル公演
『TWINKLE SNOW 2022』
2022年12月6日(火)
劇場:中野あくとれ
最後に備忘録を書いたのはいつのことでしょうか…。
この間、本当にありがたいことにたくさんの素晴らしい作品に出会ってきました。
ですから、備忘録を書かなかった作品がダメだったということではないのです、念のため。
久しぶりに備忘録を書くのは、まあ、宇宙の意思と言いましょうか…。
なにしろ久方ぶりの備忘録ですm(_ _)m
今回拝見したのは、内田慎二さん脚本・演出の『TWINKLE SNOW 2022』
2020年、配信版の『TWINKLE SNOW~雪に願いを~』を拝見したのですが、その時も私、この作品のドラマツルギーに激しく涙したものでございます。
その作品が生の舞台で観られるとなりゃあ、そりゃあ飛んで行く訳です。
物語をフライヤーから引用させていただくと
早くに夫を亡くし、残された息子と二人で貧しくも慎ましく生きる女・春奈。
そんな彼女の元を妹二人が久しぶりに訪ねて来る。
更には、20年以上前に突然行方不明になっていた兄まで帰って来て……。
冬の寒さを明るく灯す、コメディタッチのドタバタストーリー!!
ということなのです。
「灯す」…そう「灯す」んです。
この作品の世界観にこんなにぴったりな言葉がありましょうか、「灯す」
兄と三人の妹、長女の息子、三女の婚約者、それぞれがそれぞれに真っ直ぐで、不器用で、温かいのです。それはまさに、この世知辛い世の中にふっと「灯」された一本のろうそくのよう。そんな優しい、優しい物語なのです。
私、最後列の座席で拝見しながら、割と序盤からずっと涙が止まらなかったのです。
涙が止まらないまま、笑えるシーンがたくさんあって、泣くやら笑うやら鼻水出るやら、そりゃあそりゃあ大事でした。。。
本作を拝見して感じることは多々あったのですが、特に大きかったのが次の二つ。
一つは「軸となる役者の存在感」です。
「軸となる」と言うと、「軸にならない役者」もいるのか?というご意見もありましょうが、そこはいったん目をつぶっていただくこととして、、、、
口幅ったいことを言いますと、序盤「少し皆さん、走ってるかな…」という感じを受けたのですよ。本当に口幅ったくて恐縮なんですがm(_ _)m
もちろん時間が経過するにつれて、ちゃんとしっくり来られていたわけですが、そこに長男役の内田さんが登場するとね、もう一気に空気が穏やかになるのですよ。
それは長男の人物像がそうであるということなのかもしれない。しかしそれ以上に、内田さんという役者の、その人間としての、空気というものもあると思うのですよ。
兄の登場によってその場の空気が、なんだかふわっといい感じに落ち着いて、まとまっていく感じ。あれは凄かったなあ、としみじ感じるのです。
そしてそれは、軸となる役者の存在感に、ちゃんと吸収されていくというか、集約されていく周りの役者さんの感受性の勝利でもあると思うのです。
軸とその周りがちゃんとまとまっていくためにはお互いの力量が求められるわけで、その意味ではあの物語の中にいたすべての役者さんに拍手なのです。
いま一つが「悲しいことを優しく、辛いことを温かく」という手法の美しさ。
長男と長女の二人の場面なんて、まあ、その美しさがしみじみと炸裂して、そりゃあ涙せずにはおられないわけです。
なんと言いましょうか、モーツァルトの音楽を聴いている感じなのですよ。
兄の思いが本当は分かりすぎるほど分かって、痛いほど伝わって、本当はお兄ちゃん大好きで、でもそれがうまく言えなくて、そのままその日を迎えてしまったから、春奈さん、あんな酔態になってしまうのですよね、きっと。
もちろん兄と三人の妹なのだけど、次女が生まれるまでの間、兄一人、妹一人で生きた日々があって、その日々は長男と長女でしか共有できないもので、それは兄もさることながら妹にとって、きっととてもとても特別なものなのだろうなと…。
ああ、ブログ書いてても泣けてくる…。
とまれかくまれ、この作品の根底には人間の不器用な優しさが、静かに静かに流れています。
もう一度見たい、何度でも見たい、そんな気持ちになる素晴らしい作品。
冬の始まりを告げるような肌寒いこの日に、そこはかとない温かさを胸に灯してくれる素敵な時間との出会いに感謝なのです。