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英語と日本語は別言語ですから、発想や考え方に多くの違いがあります。
しかし、英語も日本語も自分の思いを伝えるコミュニケーション・ツールである以上、同じような考え方をする点も多くあるのです。
この共通点に着目すると案外すっきりと理解できることが多くなります。
今回は日英の共通点に着目することが有効な例の1つとして「変化」を表すget・go・comeを取り上げてみたいと思います。
1.変化を表すget・go・come
まずは次の英文の意味を考えてみましょう。
1. My mother got furious when I broke the vase.
2.The company went bankrupt due to the recession.
3. After 10 years’ hard work, his dream came true finally.
それぞれの意味を確認すると以下のようになります。
1. 僕が花瓶を壊したとき母は激怒した。
2. 不況のせいでその会社は倒産した。
3. 10年間の努力の末、ついに彼の夢はかなった。
注目したいのは3つの文の動詞、get・go・comeのうしろに来ているのがすべて形容詞であることです。それらの意味をもとに、より直訳的に考えてみると以下のようになります。
get furious「怒っている状態になる」
go bankrupt「倒産状態になる」
come true「現実になる」
つまりget・go・comeはすべて「~になる」という変化を表す意味になるのです。
ではどうしてget=「手に入れる」、go=「行く」、come=「来る」がすべて変化を表す意味になるのでしょうか?
これを理解するためにはgetの本質的な意味を理解する必要があります。
2.getの本質的な意味は「動き」
getはみなさんごご存知のように「手に入れる」という意味です。
しかし、たとえばカフェで注文するときにこのように言うと違和感があります。
Can I get a cup of coffee?
なぜこの英語には違和感があるのでしょうか?
それはgetの本質的な意味が「動き」だからです。
getは何らかの動きや働きかけの結果「手に入れる」というニュアンスを持っています。
上のように注文すると違和感があるのは、カフェで注文する人は何の動きもしないからです。自分でキッチンに行ってコーヒーを自分で作ったりはしないでしょう。
何人かのネイティヴに訊いてみたところ、ホームパーティーなどで上のような言い方をすることには違和感を持たないという答えが多くありました。
ホームパーティーなどでは自らがキッチンに行ってコーヒーを作ることがありうるからだと思います。
カフェなどでオーダーする場合より適切なのは次のような言い方です。
Can I have a cup of coffee?
haveは動きを感じさせない言葉です。ですからこのような場合に適しているのです。
このgetが持つ「動き」の感覚はこの動詞の様々な用法を理解する上でかなり役に立ちますが、それはまた別の機会にご説明したいと思います。
さて、このgetの「動き」の感覚が、get・go・comeが持つ「変化」の意味を理解する上でとても重要な要素となります。
3.「動き」は「変化」につながる
getに「動き」の感覚があるように、goやcomeにも「動き」の感覚がありますが、これは言うまでもないことですよね。
そして「動き」や「移動」は「変化」につながります。
実はこの感覚は日本語でも同じです。日本語でも「動き」は「変化」につながります。
その顕著な例が「移り変わる」という日本語。
まさに「移動」の「移」と「変化」の「変」が一体化した言い方ですよね。
「行く」や「来る」という日本語もまた、そのまま変化の意味で使うことがありますよね。
「そんなこと言われると、僕は悲しくなって来るよ」
「僕と彼女は疎遠になって行ったんだ」
などがその例です。もっとも日本語の場合、このようなときには「来る」「行く」と漢字で表記せず「くる」「いく」とひらがなで表記することが多いのですが。
この「動き」が「変化」につながる感覚を身に着けると、そしてgetの本質的な意味が「動き」であることを知ると、get・go・comeがすべて変化の意味を持つことがすっきり理解できると思います。
4. 「変化」の動詞の使い分け
get・go・comeのそれぞれが「動き」に由来する「変化」の意味を持つとして、それぞれにはどのような使い分けがあるのでしょうか?簡潔にまとめると以下のようになります。
go:悪い方向への変化
come:良い方向への変化
「変化」の代表選手はbecomeですが、これは「長期的な変化」を表すのが原則です。
次の英文を考えてみましょう。
1. It’s getting warmer and cherry blossoms have begun to come out.
2. It’s becoming warmer and cherry blossoms have begun to come out.
どちらも「徐々に暖かくなってきており桜の花が咲き始めました」という意味は同じで、きちんと通じる英語ですが、複数のネイティヴに確かめてみたところ、文脈にもよりますが、よりナチュラルなのは1つ目の文のようです。
それは「暖かくなる」のはあくまで一時的なことで、秋が来れば涼しくなり、冬が来れば寒くなる以上、「暖かくなる」のはあくまで一時的な変化と感じられるからです。
一方、goは「悪い方向への変化」です。
goはいま自分のいる場所から離れていくこと。自己を中心に考える(悪い意味ではなく…)英語的な発想では、いま自分がいる場所が「良い状態」と感じられ、そこから離れていくことは「悪い状態」への移行と考えられるのかもしれませんね(これはあくまで、私の勝手な思い込みです…)。
go bad「腐る」
go wrong「(状態や様子が)おかしくなる」
go crazy「(頭が)おかしくなる」
など、goとともに悪い意味の形容詞が用いられる例は枚挙にいとまがありません。
反対のcomeは「良い方向への変化」です。
先ほどのgoの対となる考え方で行くと、いま自分のいる場所に近づいてくるcomeは「良い状態」へ移行することと考えられるのだと思われます。
come true「実現する」
come right「元通り(の良い状態)になる」
Come on! 「いい加減にしろ!(まともな状態になれ!)」
など、comeは良い状態になることを表しているのです。
5.まとめ
1. 「動き」が「変化」につながるのは日本語も英語も同じです。
2. getの意味の本質は「動き」です。
3. get・go・comeはすべて「動き」の意味があるので「変化」の意味へとつながります。
今回は日本語と英語の共通点に着目しながら変化を表すget・go・comeについて考えてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました。