伸びない人の共通点

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筆者はいままで学生、社会人を合わせて1万人以上の方と英語を学んできました。
今日はその経験から筆者が考えている「伸びない人の共通点」についてお話ししたいと思います。
英語学習が上手くいっている人の成功例を検討してみることもとても意味のあることですが、逆に上手くいっていない人の事例を見てみることも参考になると思うからです。
できるだけネガティヴにならないように書くつもりですが、お気に障る記述がありましたら広いお心でご容赦を。

1.自己流にこだわりすぎる

学習を進める上で自分自身のスタイルを作ることはとても大事です。

しかし初期の段階では提示された方法にいったん乗っかってみることも大切だと言えるでしょう。

口幅ったいようですがまずは「素直に」言われた通りにやってみること、その上で自分に合うように方法を修正していくことが成功のカギのように思われます。

数年前のこと、筆者がかつてご指導していたスクールに入学された方がいました。

その方は今まで自分なりの方法で5年ほど勉強をしてきたけれども成果が上がらず、スクールに入って来られたのです。

5年ほど勉強してTOEICが500点になるかならないかの方でしたから、英語教師の目から見れば学習方法が完全に間違っていると言わざるを得ないという方でした。

初回授業の時、宿題のやり方や学習の進め方をご説明していると、その方は「やり方は分かりました。でも自分のやり方で宿題を進めてもいいですか?」とご質問されました。

年齢が私よりも上の方でしたし、自分のやり方にプライドがあるのだろうとは思いましたが、同時に「これでは伸びないな…」と確信しました。

そこで、できるだけやんわりと「まずはご提示した方法を試してみてもらえませんか?」とお願いしましたが、残念ながら聞く耳を持っていただけませんでした。

はたしてその方は数週間後に「自分のやり方を貫きたい」という理由で休学に入り、その後、スクールには戻って来られませんでした。

のちに入学されたその方の同僚の方から聞いたところによると、その方は結局英語力が伸びず、TOEICが目標のスコアに達することもなく、希望のポジションに就くこともできなかったそうです。

自分に合わない方法に固執するのも考えものですが、自分流にこだわりすぎて視野が狭いまま学習を続けるのもデメリットが大きいものです。まずは言われた通りにやってみるという受容力が必要だと言えるでしょう。

2.学習にオリジナリティがない

先に書いた内容とまったく反対になりますが、学習にオリジナリティがまったくない人も伸び悩むように思われます。

学習効果を上げている人の多くは、まず提示された方法を試してみて、適宜自分に合うように工夫を凝らしているものです。

当然ですが人はそれぞれ違います。10人の人がいればその10人全員に100%当てはまる有効な方法というのは簡単には見つかりません(と言うか、存在しないと思います)。

英語・英会話スクールなどで提示される学習法は最大公約数的なもので、極力多くの人が成果を出せるようご指導するのですが、部分的には自分に合わないところもあるでしょう。

そこを自分なりに工夫してみる、自分に合うようにadjustしてみることはとても重要です。

たとえば「これらの文章を10回音読してみてください」とご指導したとして、成果が上がる人はそれを杓子定規に守るのではなく、ちょっと工夫されるものです。

自分になじむ、覚えやすい文章は5回だけ音読する、覚えにくい文章や親近感の湧きにくい文章は20回音読してみる。これだけも学習にオリジナリティが加わっています。

学習にオリジナリティがない人は3回音読すれば体になじむ文章もちゃんと10回音読し、身についていない文章も言われた通りに10回の音読で済ませてしまうということになりがちです。

まずは言われた通りにやってみて、その上で自分なりの学習方法を考えること、自分の学習にオリジナリティを持たせることも英語力を伸ばす上で大切な要素なのです。

3.自分の頭で考えない

先の「オリジナリティ」の話にも通じますが、自分の頭で考えることをしない人は相当伸び悩みます。

以前、ある生徒が「私は腹ペコです」という意味の”I could eat a horse.”という表現について質問に来られたことがあります。

「どうしてcouldを使うのですか?」というご質問でしたが、「調べてご覧になりましたか?」と尋ねると「調べていません」というお返事。

「どうしてcouldを使うか考えてご覧になりましたか?」と尋ねると「考えてません」というお返事が返ってきました。

これでは英語力は伸びません。きつい言い方になりますが、このような方は教師を辞書と勘違いしているのです。

また状況にもよりますが、こんな時にすんなりと「これは○○という理由でcouldを使うのですよ」と答えてしまう教師も考え物です。

教師は生徒の身代わりになることはできないのですから、どうすれば生徒が自分で英語力を身につけられるか、その方向性を示すことが大事なのに、簡単に答えだけ与えるのは本当に生徒のことを考えているとは言えないでしょう。

私は生徒の方に「ご質問は大歓迎です。しかし質問に来る前にはまず自分で調べてみて、自分なりの仮説を立ててきてください」とお願いしています。

自ら調べ仮説を立てる中でこそ、自分が抱えている疑問点を整理することにもなります。

その過程の中で自分の頭で考えるからこそ英語力が身についていくからです。

4.相談することで安心してしまう

学習カウンセリングは学習の方向性を考えたり、学習の進捗を確認する上で非常に有効です。しかしカウンセリングの受け方にも上手・下手があります。

一概には言えませんが、あまり頻繁にカウンセリングを受けに来る人は英語の伸びが芳しくないように思います。

そのような人は相談することで安心してしまっているからです。

学習についての不安を吐露することはそれなりに意味のあることですが、もっと大切なのはその不安と自分なりに付き合いながら、とにかく学習を前に進め継続することです。

たとえば週1回のペースでカウンセリングに来る人は、ただ不安を聞いてもらっているだけということが多いように思います。

わざわざ時間をかけてスクールに来て、毎週同じような不安を30分も1時間も教師に聞いてもらうくらいなら、その時間を勉強に費やした方が良いのです。

そもそも一度カウンセリングを受けて学習の方針が決まったら、ある程度の時間はその方針に従って勉強に打ち込んでみないと、次の展開は考えづらいものなのです(安易にカウンセリングを受けてしまう教師の側にも問題があると思いますが…)。

相談することは次の学習の展望を開くためには有効ですが、相談したからといって英語力が上がるわけではありません

相談した内容に基づいてひたむきな努力が続けられるかどうかが英語力向上のカギなのです。

今回は英語力が伸びない人の共通点を考えてみました。
ひと言で、そしてやや厳しい言い方で言ってしまえば、「自分の英語力を伸ばしてあげられるのは自分以外にはあり得ない」ということなのです。
その点を念頭に置いている人は、やや根性論になるかもしれませんが、学習のハンドリングをうまく行い、英語力の向上に結び付けることができるように思われます。