未来なのに現在形?「確定未来」の正体
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いま私の手元にある文法書には未来の代用として現在形を用いることがあり、その中の1つに「確定的な未来・予定」は現在形で表すというルールが記されています。
このように確定している未来の事柄を現在形で表すことを確定未来と呼ぶのですが、どうして未来のことなのに現在形を使うのでしょうか?
今回は確定未来を足掛かりとしてwillという助動詞の意味について考えてみたいと思います。
1.willの意味を列挙してみると…
私の手元にある文法書には、willの意味として次のようなものが列挙されています。
(1) 単純未来
(2) 意志未来
(3) 現在の傾向・習性
(4) 現在の推量
「あれ?」と思われませんか?
普通はwillは「未来形」であると教えられるはずなのに、(3)と(4)は現在の事柄をwillを使って述べることになっているのです。
現在のことも表現できるのならば、もはやwillを「未来形」と呼ぶのはおかしいのではないでしょうか?まずはこのあたりから考えてみたいと思います。
2. willの本質は「推測」
実はwillという助動詞の本質は「推測」なのです。
しかもwillはかなり可能性のあることを推測するときに使います。「ほぼ~だろう」という感じです。
私の手元にある英英辞典でwillの定義を見てみると次のように書いてあります。
“especially things that you are certain“とあるのが注目すべき点で、willはある程度確信をもって物事を推測する感覚の言葉だということが分かります。
たしかに未来のことは推測の域を出ないことが多いので、willは未来のことに用いることが多いのは事実ですが、現在のことを推測するというケースもあるわけですから、willに「現在の推量」というはたらきが出てくることになるわけです。
逆に言えば、未来のことでも推測する必要がないことにはwillを用いる必要はないということになります。
これがまさに「確定未来」という考え方になるのです。
3.「確定未来には現在形」の理由
先ほどご紹介したように「未来のことでも推測する必要がないことにはwillを用いない」というのが「確定未来には現在形を用いる」ことの理由なのですが、例を挙げながら確認してみましょう。
端的に言えば確定している未来の予定などは、まさに確定しているがために「推測」をする必要がないのです。
たとえば乗り物の発着時間、催し物の開始時間や終了時間などはきっちり決まっていることが多いですよね。そこに推測の余地はないわけです。
日本語でも駅員さんに「この急行は何時に東京発ですか?」と尋ねたとき、「10時15分だと思います…」などと推測的な答えが返ってきたら不安になってしまいます。「10時15分です」としっかり答えてくれるのが普通ですよね。これと同じことです。
A: What time does this express train leave Tokyo station?
B: It leaves at ten fifteen.
一方、同じ乗り物の発着時間を表現する場合でも、推測の余地がある場合はwillを用います。
たとえば事故などで電車が遅延してダイヤが乱れている場合。
このときは駅員さんといえども正確な発着時間を言い切れない場合がありますよね。こんなときはwillの出番です。
A: What time will the express train I’m supposed to take leave?
B: We suppose It will leave at ten fifteen.
「私が乗る予定の急行は何時に出発しますか?」
「10時15分に出発する見込みです」
現在形で発着時間を表す時との違いがお分かりいただけたかと思います。
4.傾向や習性を表すwill
ついでに「傾向や習性を表すwill」についても確認してみましょう。
どうしてwillにはこのような意味があるのでしょうか?
これもwillが持つ推測の意味がベースになっているのです。
つまり習慣的なことや傾向は推測しやすいからwillで表現できるわけです。
たとえばNoahの兄であるLiamは夕ご飯の前はいつも自分の部屋で勉強しているとします。それがLiamの習慣なのです。
Noahの母親が「そろそろ夕ご飯だけど、Liamはどこにいるの?」とNoahに尋ねたとしましょう。Liamの習慣を知っているNoahは「いつものように部屋で勉強しているんだろう」と簡単に推測ができますよね。推測ができるからLiamの習慣をwillを使って表現できるのです。
My brother, Liam will usually study in his room before dinner.
「僕の兄のLiamは夕飯前、たいていは部屋で勉強している(それが習慣だ)」
このような文が成立するわけです。
過去の習慣を表すwouldをご存知の方もいらっしゃると思いますが、これも同じ理屈です。
I would often hang out with him in my college days.
「大学生のころはよく彼と遊んだものだ」
これは「傾向」や「習性」についても同様の考え方です。
傾向や習性については容易に推測ができるのでwilを用いて表現できるのです。
たとえば電車の中で赤ちゃんが泣いているとして、
Don’t be so cranky. Babies will cry.
「そんなにカリカリするなよ。赤ん坊って泣くもんなんだから」といった感じです。
文法書には結論的な「意味」だけが列挙されていて、そのような意味をもたらす「言葉の本質」については触れていないことが多いのです。
英語を理解し使いこなすためには、この「本質」が大事。しっかり理解してご自分の言葉で使ってみてください。