“get”は多義語?(1)
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ホテルのフロントで“I want to get my room cleaned.”と頼むとやはり違和感があります。
getには「手に入れる」「~してもらう」という意味があるから、2つとも問題なさそうですが、どうして不自然に聞こえるのでしょうか?
そこには日本人の多くが抱いているgetに関する誤解が影響しています。
今回はgetの根本にある感覚を考えてみることにしましょう。
1.getには55の意味がある?
“get”を辞書で引いてみると山のように意味が掲載されています。
筆者の手元にある、大学受験用としてもよく使われる『新英和中辞典』(研究社)を開いてみると、getの項目には大別して23個、細かく分けると55個もの意味が載っています。
中学・高校や多くの英語・英会話スクールなどでも、getは「手に入れる」という意味以外に、”get angry”「腹を立てる」、”get to”「到着する」などのようにたくさんの熟語があると教えられます。
もう少し一般化して「getには『~になる(変化)』の意味や『移動』の意味があります」と教える教師もいます。しかし最終的には「getは多義語です。頑張って意味を覚えましょう!」と言って済ませてしまうことが多いようです。
多くの学習者はこの種の解説を「ああ、そうなんだ…」と受け入れ、言われるままにgetの意味をあれこれと覚え、熟語をたくさん覚えようとします。
そのような人たちの姿を見ると、日本人学習者の「素直さ」と「忍耐強さ」に頭が下がる思いがします。
2.「根本」を知れば「多義語」ではなくなる!
細かく分けると55もの意味を持ち、それに加えて数えきれないほどの熟語があるとされるgetのすべては、いかに勤勉な日本人といえども、そう簡単には覚えられるものではありません。
ここで立ち止まって考えてみましょう。「手に入れる」「~になる」「到着する」などというまったく異なる意味が、なぜgetという1つの単語に同居しているのでしょうか?
大切なのはこのような疑問を抱くことです。ただ丸暗記するのではなくて、「なぜ?」を解き明かしていくと英語の理解は飛躍的に深まります。そしてgetが本当の意味で「使える言葉」となるのです。
結論を言えば、getは「多義語」などではありません。
多くの学習者がgetの様々な意味や用法を、あれこれ分類して覚えようとします。分類すること自体は、我々がノンネイティヴである以上、決して悪いことではありませんが、ネイティヴにとっては”get”は”get”なのです。それ以上でもそれ以下でもありません。
getの持つ根本のイメージをきちんと押さえておけば、それをほんの少し発展させるだけでクリアに理解できるものです。
そしてそのように理解することで「これは多義語!だから頑張って丸暗記!」という無用なプレッシャーから解放されることができるのです。
3.getの根本は「手に入れる」ではない!
日本人学習者のほとんど全員が、「getは『手に入れる』という意味だ」と最初に教えられます。
しかしこれはgetに関する大いなる誤解です。そしてこの誤解がgetをめぐる悲劇の始まりなのです。
getの根本を「手に入れる」だと覚えてしまうと、この単語の持つ意味の広がりが見えにくくなり、辞書に羅列されている気が滅入るほど多くの意味と格闘する羽目になるのです。
それではgetの根本とは何でしょうか?それは「動き」ということです。
get to「到着する」、get in「中に入る」、get out「外に出る」、get on「乗る」、get off「離れる」などは「熟語として丸覚え!」という人がいますが、そんなことをする必要はありません。
getという「動き」を表す言葉に、方向を表す言葉がくっついただけです。
getに「動き」のイメージがあることを知っていれば、これらの「熟語」を見聞きした時に簡単に理解できますし、覚えるのもグンと楽になります。
get along together「仲良くやっていく」なんて「熟語」も余裕ですね。alongは「前へ」という副詞ですから、「一緒に前に動いていく・進んでいく」ということになり、「仲良くやっていく」なんて意味が出て来るんですね。
それにしても、どうしてgetには「変化」や「手に入れる」「~してもらう」という意味があるのでしょうか?
次回の記事ではそのあたりの謎を解いてみようと思います。
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