「場違い英語」にご用心!

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英語も日本語もコミュニケーションのツールである以上、TPOを考慮することが重要です。
参考書や単語集、英語学校のレッスンなどでも、「どんな場面で使うか?」を抜きにして小難しい表現を羅列している場合がありますが、場違いな表現を連発すると、相手に微妙な印象を与えてしまうことがあります。
今回は筆者が最近耳にした、「場違い英語」をご紹介しましょう。

1.会話の基本は”Simple is the best!”

「場違い英語」で最もよく見られるのが、「必要以上に難しい言い回しをする」ということです。

英語学校などでは「こんな表現もしておきましょう!」「こういう言い換え表現もあります!」などと教えられることがあります。

もちろん、様々な表現を知っておくのは良いことですが、とりわけ日常会話においてはシンプルな表現を使う方が、言いたいことを違和感なく伝えることができます

日本語で考えてみるとそのことがよく分かります。

私たちは日本語で日常的な会話をするときに、あまり込み入った表現は使いませんよね。日本語ネイティヴは簡素な言葉遣いで日常会話をこなすものです。

これは英語も同じです。たとえば受験英語では必須とされる程度や因果関係を表す「so ~ that構文」ですが、筆者はネイティヴとの日常的な会話で、この構文が使われるのを聞いたことがありません。

会話の基本は”Simple is the best!”です。まずそのことを知っておいていただきたいと思います。

2.おびただしき数の人々に驚天動地?

それでは具体的に、「場違い英語」の例をいくつか挙げてみたいと思います。

筆者は先日、英語を勉強中の日本人の友人Aと、日本に住んで1年ほどになるアメリカ人の友人Bとの3人で木挽町の歌舞伎座に歌舞伎を見に行きました。

英語を練習したいというAの希望で、その日の会話はすべて「英語縛り」としました。

AもBも歌舞伎を見るのは初めて。歌舞伎座がとても大きな劇場で、たくさんの観衆がいることに驚いたようです。

歌舞伎鑑賞のあと、近くのレストランで食事をしているとき、Aが次のように言いました。

I was astonished that there were numerous audience in the theater.

その言葉を聞いたBはちょっと困惑したように、“O, OK…”と言いました。その反応に、Aも「あれ、変なこと言ったかな…」という表情をしていました。

せっかくの機会でしたから、私はAになぜ上記のような言い回しをしたのか尋ねてみました。

するとAは「最近、スクールでsurpriseの言い換えとしてastonishを習ったし、いつもa lot ofやmanyばかりでは単調な会話になるのでnumerousやa considerable number ofを使うとよいと教えてもらったから…」を言いました。

そこでBに「Aの英語のどこが不自然だったか?」を聞いてみると、彼は「大げさすぎるし固すぎる」と答えました。

検討してみると、まず“astonish”という言葉は大げさすぎたのです。

Aに「astonishはsurpriseの言い換え」と短絡的に教えた教師に問題があると思いますが(もしくはAがちゃんと説明を聞いていなかった可能性もありますが…)astonishはsurpriseに比べるとかなり強い意味を持つ言葉です。

そもそもastonishはラテン語の「雷を落とす」という言葉に語源があり、まさに「雷に打たれたような衝撃・驚き」を表すわけです。

歌舞伎座に人が多くてびっくりしたとしても、果たして「雷に打たれたような」レベルの驚きだったのでしょうか?

わざわざastonishを使わずに“I was very surprised”といった表現で充分だったことでしょう。

そして“numerous”という言葉は固すぎたのです。

numerousやa considerable number ofなどという表現はかなり硬質で、日常会話で耳にすることはほとんどありません。

シンプルにmanya lot ofと言えば事足ります。

また”audience”という単語も、問題があるというほどではありませんが、peopleのように簡略化しても良いでしょう。

Aが言った

I was astonished that there were numerous audience in the theater.

という言葉を、そのニュアンス通りに日本語に訳すならば、

劇場におびただしき数の観衆がいたことは驚天動地の事態でした。

ということになるでしょう。日本語でこんな言い回しをされると私たちも「ああ、そうなんだ…」といった反応しかできませんよね(または、失礼ながら苦笑してしまうでしょう…)。

つまりこのような場合、Aはごくシンプルに、

I was surprised that there were many people in the theater.

と言えば良かったわけです。

3.語感やTPOを考慮しよう!

astonishやnumerousという単語を使うことが悪いというわけではありません。

ただ使うときには、言葉の持つ語感やそれにふさわしいTPOを考慮すべきだということです。

たとえば次のような文であればastonishを使っても違和感はないと思います。

I’m astonished he suddenly died of a heart attack because he was perfectly fine when I saw him this morning.

「今朝会った時にはとても元気だったので、彼が心臓発作で突然亡くなったということに僕はビックリ仰天している。」

このような場合には驚きがかなり強いと思われますから、astonishを使っても問題なさそうです。

またニュースなどの報道で次のような英文が使われたとすれば、違和感はないでしょう。

Having numerous visitors from all over the world to the Expo, the government concluded that it was a great success.

「世界中から多数の来場者を迎えることができたので、政府は万博は大成功だったと結論付けました。」

報道やプレゼンテーション、交渉や講演など、硬質な表現が好まれる場合にはnumerousなどを使っても不自然な印象を与えません

たしかにビジネスなどでは、簡単な単語ばかりを使うと印象を損なうこともあります。
しかし日常会話では使う言葉はシンプルで良いのです。
また、ビジネスシーンであっても、気軽やミーティングや仕事の合間の世間話などで、過度に難しい言葉を使うとやはり不自然です。
大切なことは言葉の持つ感覚をよく理解し、TPOを応じて使い分けること。
ぜひ新しい言葉を覚える時には、その背後にある語感に注意してみてください。