“will”は”would”より丁寧?英語における丁寧さとは?

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英語の文法書などには「pleaseよりもWill you ~?の方が丁寧」「Will you ~?よりもWould you ~?の方が丁寧」と書いてあります。「なぜそうなるかは考えず、とりあえず丸覚え!」で済ましてしまうことを一概に否定はしませんが、このようになる理由を考えてみると、英語の世界を広げるのに役立つものです。今回は英語における丁寧さについて考えてみたいと思います。

1. 英語の丁寧さとは「距離を取る」こと

英語における丁寧表現の基本は、相手と「距離を取る」ということです。

相手との距離が広がれば広がるほど、丁寧な表現ということになるのです。

以下、具体的な例を挙げて比較しながら、考えてみることにしましょう。

Submit the document by tomorrow.

「明日までにその書類を提出しなさい」ということで、これは皆さんよくご存じ、直球的な命令文ですね。

Please submit the document by tomorrow.

「明日までにその書類を提出してください」ということで、pleaseが付いた分、いくぶん丁寧になりました。

一般的に英語は、あれこれ言葉を付け足して文を長くするほど、相手との距離を取っている感じがします。

これは日本語も同じですよね。

「明日までにその書類を提出してください」の前に「お手数ですが」「恐縮ですが」「ご多用でしょうが」などと付け足すだけで、途端に丁寧になりますね。

Will you submit the document by tomorrow?”

「明日までにその書類を提出してもらえますか」とすると、もう少し丁寧になった感じがします。

疑問形にすると丁寧になるのは、やはり日本語も同じことですね。

「明日までにその書類を提出してください」と言うよりも「提出してもらえますか」と言う方がマイルドに聞こえます。

しかし、どうして疑問形にすると丁寧に聞こえるのでしょうか?

それは相手に「選択の余地」を与えていると感じられるからです。

疑問文である以上、相手は断ることもできるわけですね。

このように「選択の余地」を相手に与えている分、相手と「距離を取る」感じが出ているので、丁寧に感じられるのです。

2. willよりもwouldが丁寧なのはなぜ?

Will you ~?よりもWould you ~?の方が丁寧に感じられると文法書などにも書いてあります。

しかし、それはなぜなのでしょうか?

それはwouldを使う方がwillを使うよりも、より相手との距離を取っているからです。

みなさんご存知のように、wouldはwillの過去形です。

過去形の本質は「距離感・隔たり」で、その基本は現在と切り離された(現在と距離のある)過去のことを述べるということです。

過去に起こったことや過去にした動作であっても、現在とのつながりを意識する場合、ネイティヴは過去形ではなく現在完了形を使います。

具体的な例文を挙げて確認してみましょう。

A: What did you eat this morning?

B: I wasn’t very hungry, and I just ate a slice of bread.

A: You need to eat more. A good breakfast is the key to make your brain work.

B: Well, according to the article I read recently, that’s just a common saying with no evidence.

A: 今朝、何を食べた?

B: あまりお腹が減ってなかったから、パンをひと切れ食べただけだよ

A: もっと食べなきゃだめよ。朝食をしっかり摂ることが、脳を働かせるためのカギなのよ。

B: でもね、最近読んだ記事によると、それって根拠のない俗説らしいよ。

この例文で”What did you eat this morning?”や”I just ate a slice of bread”などと過去形を使っているのは、現在とのつながりを意識していないからですね。

では次の例の場合はどうでしょうか?

A: My cheesecake has gone! I put it in the fridge this morning.

B: Oh, I’ve just eaten it.

A: Why? I’ve been looking forward to eating it after dinner!

B: Sorry. I thought Mom made it for me.

A: 僕のチーズケーキがない!今朝、冷蔵庫に入れといたんだけど。

B: あ、食べちゃった

A: なんで!晩御飯のあとに食べるの、楽しみにしてたのに。

B: ごめんね。ママが私のために作ってくれたんだと思ったの。

この例文の”Oh, I’ve just eaten it”の部分は、ケーキを食べたのは過去のことですが、その結果が現在に影響していることを意識している、つまり現在とのつながりを意識しているので現在完了を使っているわけです。

「食べちゃっから、もうないよ」といった感じですね。

この部分を過去形で”I just ate it.”と表現してはいけないのでしょうか?

もちろん構いません。現在とのつながりを意識していなければ、そのような言い方をしてもまったく問題ないのです。

このような過去形が持つ「距離・隔たり」の感覚を知っていれば、Will you~?よりもWould you ~?の方が丁寧な感じがする理由がお分かりですね。

wouldを使うことで、相手とより距離を取っているので丁寧に聞こえるわけです。

3.Will you ~?は命令的に聞こえる?

「Will you~?は思われているほど丁寧ではなく、命令的に聞こえることもある」と説明されることがあります。

これは一面的には正しいと言えるでしょう。

もっとも、Will you~?が常に命令的に聞こえるわけではありません。

会話というのは言葉そのもの以外に、表情や声のトーンでニュアンスを伝えることができるわけですから、これらをうまく使えば命令的に聞こえない場合もあります。

しかし、言い方によっては命令的・指示的に聞こえることもあります。

Will you ~?は直訳的には「意志」を尋ねているわけですが、それがどうして命令的に聞こえるのでしょうか?

前回の記事でも述べましたが、「意志」は「命令」に通じる部分があります。

これは日本語も英語も同じことです。

たとえば上司が新入社員を凝視しながら低い声で「君、今日は残業するつもりだよね?」と言ったらどうでしょう。

たしかに「つもり」という日本語は「意志」を意味しますが、この言い方だと命令・指示に聞こえますよね。

「君、今日は残業しなさい」と言っているのと何ら変わりません。

疑問文にして形式的には相手に選択の余地を与えているように見えますが、実のところは相手の意向を聞くつもりなどないのです。

willが命令的に聞こえる例文を確認してみましょう。

A: I want you to make two copies of …

B: What time can I go to lunch? I went to the gym this morning before work and didn’t have breakfast. I’m starving and I really need to eat now. Otherwise my brain won’t be able to work and I can’t focus on my work.

A: Calm down. I’ll give you a lunch break right after you make two …

B: Oh, could you give me an extra thirty minutes for a lunch break today because I have to go to the nearby ATM to pay next month’s rent? If I fail to pay by the due date again, my landlord will sue …

A: Stop! Now you will listen to me and do what I say! Make two copies of this document!

A: コピーを2部…。

B: 何時にお昼に行っていいですか?今朝、仕事前にジムに行って朝ごはん食べてないんですよね。ものすごくお腹減っちゃって、すぐにでも何か食べなきゃ頭が働かなくて、仕事に集中できないんですよ。

A: 落ち着いて。お昼休みあげるから、まず2部…

B: そうだ、今日は30分余計にお昼休みもらってもいいですか?近くにATMに行って来月の家賃を払わないと。また期限までに払わないと大家さんに訴え…。

A: ちょっと待って!まず私の言うことを聞いて言った通りにしなさい!この書類のコピーを2部とってちょうだい!

話を聞かない部下に対して苛立って、”Now you will listen to me and do what I say!”と言っていますが、このwillは明らかに命令・指示のニュアンスで使われていますね。

もう1つシンプルな例文を挙げましょう。

A: Sorry, I’m late. What did I miss?

B: This is the fifth time you’ve been late for the morning meeting this month.

A: I know, but I can explain.

B: Not necessary! Will you not be late again, no matter what the reason?

A: 遅くなってすみません。朝礼の内容は何だったんですか?

B: 今月、君が朝礼に遅れて来るのはこれで5回目だぞ。

A: 分かってますが、理由を説明します。

B: その必要はないよ!理由が何であれ、二度と遅れないように!

”Will you not be late again, no matter what the reason?”は相手の意志を尋ねているというよりも、命令・指示している感じですね。

「二度と遅れないでもらえるかな?」が直訳ですが、相手に選択の余地を与えている感じはしません

このようにwillが持つ「意志」の意味が「命令・指示」につながることはよくあるのです。

4.距離を取り、さらに丁寧度をあげる方法

疑問文にして相手に選択の余地を与え、相手との距離を取ることで丁寧さをあげるよりも、さらに丁寧にする方法があります。

例文を通して確認してみましょう。

A: I’m planning to send you the estimate you requested next Wednesday.

B: Thank you, but I was wondering if you could send it to me next Monday.

A: I’ll try, but I’d appreciate it if you’d give me enough time so that I don’t need to make any corrections later.

B: I understand. I’ll wait until next Wednesday.

A: ご依頼いただいた見積書を来週の水曜日にお送りする予定です。

B: ありがとうございます。しかし、来週の月曜日に送っていただけないでしょうか

A: やってみますが、後で修正する必要がないように、充分な時間をいただけるとありがたいのですが

B: 分かりました。来週の水曜日までお待ちします。

”I was wondering if you could send it to me next Monday”や”I’d appreciate it if you’d give me enough time”の部分は”Would you ~?”と言うよりもさらに丁寧に感じられます。

しかし、どうしてこれらは丁寧に依頼しているように聞こえるのでしょうか?

”I was wondering if ~”や”I’d appreciate it if ~”の部分は疑問文ではありません。

疑問文は相手に語り掛けていますが、”I was wondering if ~”や”I’d appreciate it if ~”は形式的に言えば相手に語り掛けてさえいないのです。

「~かなあ」「~だと嬉しいなあ」という感じの、形式上は独り言のような表現です。

相手に語り掛けていないということは、その分、相手と距離を取っているということです。

相手との距離がより感じられるので、丁寧さも増していると感じられるわけです。

”I was wondering if ~”や”I’d appreciate it if ~”のように過去形を使っているのは、先ほどご説明したように距離を取っている証拠です。

これらの表現はビジネスなどでも頻繁に使われる丁寧表現なのです。

今回は英語における丁寧さについて考えてみました。相手との距離を取れば取るほど丁寧さが増すというのは、日本語も英語も同じですね。実際の会話では、表情や声のトーンで丁寧さを表すこともできますが、メールなどの文書ではこれらの要素を活用することができません。そんな場合は、”Would you ~?”や”I was wondering if ~”や”I’d appreciate it if ~”などを使い、丁寧さを目に見える形で伝えるとよいでしょう。
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