これって間違い??ネイティヴの指摘とどう向き合うか?

【この記事は約5分で読めます】

英語学校や英会話スクールで習った通りの言い方をしたのに、ネイティヴから「そんな言い方はしない!」と指摘されてしまった…。そんなご質問やご相談を受けることがしばしばあります。せっかく勉強したことを思い切って使ってみたら「そんな言い方はしない!」と言われてしまうとガックリきてしまうのも無理のないことです。このような指摘を受けたことがある方の中には「やはりノンネイティブから英語を学んでも無駄なのだ」と結論を急いでしまう方もいらっしゃいます。今回は「そんな言い方はしない!」という指摘をネイティヴから受けた場合の向き合い方について考えてみたいと思います。

1.英語の使用人口・使用地域

まず認識しなければならないのは、日本語と英語ではこれを用いる範囲も人口も大きく異なるということです。

日本語を公用語としている国はもちろん日本です。意外なことに、パラオの一部の地域では日本語を公用語と定めていますが、いずれにしても日本語を公用語として用いる国や地域はごくごく限られていて、その人口も限定的です。

このように使われる範囲や人口が限定される言語は「標準化」される傾向が強いので、誰もが同じ表現を使うようになりがです。

このような言語環境で育った日本語ネイティヴは、何かを表現するときに「ただ一つの正解」を求めがちなのです。

一方、英語を母国語とする人は3億8千万人ほどですが、英語を話す人口は15億人にも上るといわれています。また英語を第一言語とする国は12ヵ国、公用語とする国は50ヵ国もあるのです。

このように使用される国や地域が多岐にわたり、使用人口が非常に多い言語では同じ内容を表現する技法が異なったり、同じ構文でも微妙な違いが生じたりする場合があります。

つまり「私はそのような言い方はしない」「私もそのような言い方もする」とネイティヴ同士でも見解が分かれることはよくあることなのです。

日本語ネイティヴが考えるような「ただ一つの正解」が定まらないことがしばしばあるということです。

2.ネイティヴ同士でも意見は分かれる

同じ英語表現でも、それが適切かどうかについてはネイティヴ同士で意見が分かれることもあります。実例をいくつか示してみましょう。

もう20年も前のことですが、筆者がニューヨークに暮らし始めたころ、アメリカ人の友人と一緒に当時話題になっていたカフェに行きました。

May I have a coffee and a piece of edamame tart?

「コーヒーと枝豆タルトをください」と筆者は注文したのですが(ちなみに当時のニューヨークでは枝豆は一大ブームを巻き起こしていました)、友人のアメリカ人は、「このシチュエーションで”May I”を使うのは違和感がある」と言いました。

お客さんがウェイターに使う言葉としては丁寧すぎるというのです。

Can I have a coffee and a piece of edamame tart?

I’ll have a coffee and a piece of edamame tart.

あたりで充分だということでした。

翌日このことを別のアメリカ人の友人に話したところ、「たしかに自分も”May I”は使わないと思うが、違和感を覚えるというほどではない。だいたい丁寧であることはいいことじゃないか!」と言っていました。

もう一つ例を挙げてみましょう。

旺文社から出版されている『オーレックス和英辞典』にはネイティヴ100人に聞く文法・語法についてのアンケートというコーナーがあります。その中にある非常に興味深いアンケートをひとつご紹介します。

このアンケートでは、「その俳優は故郷に新しい図書館を建設した。」という日本文を以下のように英訳し、ネイティヴたちに「あなたもこのような言い回しをするかどうか」と尋ねています。

1)The actor made a new library in his hometown.

2)The actor built a new library in his hometown.

3)The actor had a new library built in his hometown.

アンケートの結果をお伝えする前に、上記の3つの文について通常はどのような説明がなされるか確認しておきましょう。

まず1)の文ですが、通常は建造物について”make”を使うことはないのでこの文は不適格とされます。

2)の文を英文法のルール通りに解釈すると「その俳優は(自力で)故郷に新しい図書館を建設した。」となります。つまり自ら工具を持って、あるいは重機を操縦して図書館を建設したこととなり、これも不適格とされます。

しかるべき人や機関に依頼して建設したということになると、使役動詞を用いた”have something p.p.”の形を用いるのが原則ですので、3)の文が適格ということになります。つまり上記3つの文で適格なのは3)のみということになります。

それでは『オーレックス和英辞典』によるアンケート結果はどうなったのでしょうか。グラフで示しておきましょう。

上記の1)~3)の文について、水色が「自分そう言う」、オレンジが「自分はそう言わない」という結果です。

英文法的には不適格な2)の文でも過半数のネイティヴは「自分もそう言う」と答えています

一方、文法的に適格な3)の文でも9%のネイティヴは「自分はそう言わない」と答えているのです。

つまり文法的に正しいとされる3)の文でさえ、すべてのネイティヴが一致してこの言い方を適格としていないということです。

このように同じ文法や表現をめぐって、ネイティヴ同士で意見が分かれることは決して珍しくないのです。

3.セカンドオピニオンの大切さ

以上から分かることは、こと英語においては「唯一無二の絶対的な正解が成立しない場合がある」ということです。ネイティヴでさえも意見が分かれる例はいくらでもあるのです。

そこで勉強した英文をネイティヴに対して使ったとき、「私たちはそんな言い方をしない」と言われたとしても、過度に敏感になる必要はないということです。

過度に反応することでモチベーションが下がったり、いままでの学習の積み上げを放棄したりすることのほうが、よほどダメージが大きくなります。

もちろん、「本当にこれでいいのだろうか?」と疑問を持つことはよいことです。

ただ、一人のネイティヴから指摘を受けたからと言って、それを鵜吞みにして「こんな言い方はしないのだ!」「この表現は不自然で役に立たないのだ」などと結論を急いではいけません。

可能ならば他のネイティヴにセカンドオピニオンを求めるのがよいでしょう。

そのとき、贅沢を言えば指摘を受けたネイティヴとは異なる英語圏の人に所見を聞くのがベストです。

アメリカ英語を話すネイティヴから指摘を受けたのなら、ブリティッシュ英語を話すネイティヴにセカンドオピニオンを求めるというやり方です。

また他のネイティヴにセカンドオピニオンを求めることが難しければ、指摘を受けた英文をAIなどを活用して、本当に不適格な英文なのかどうかを検証してみてもよいでしょう。

4.指摘された内容について理論的な説明を受ける

英語ネイティヴから指摘を受けたときに、できればその内容について理論的な説明をしてもらうとよいでしょう。

なぜその表現はおかしかったのか、それが分からないと指摘の中身が腑に落ちず、その後の勉強に役立って行かないのです。

しかし、指摘の内容についてネイティヴから理論的な説明を受けるのはなかなか難しいものです。

そもそもネイティヴはどういう基準で、英語表現の適否を判断しているのでしょうか?

日本語で考えてみると分かりやすいと思いますので、一つ例を挙げてみましょう。

君が行かないなら僕が行くよ。

君は行かないかもしれないが、僕は行くよ。

前者では「君が」「僕が」と言い、後者は「君は」「僕は」と言っています。これを逆にすると違和感のある日本語になります。

君は行かないなら僕は行くよ。

君が行かないかもしれないが、僕が行くよ。

なんだかしっくり来ませんよね。それはなぜでしょうか?

ほとんどの日本人は「その方が自然だから」「そんな言い方はしないから」としか言いようがないのではないでしょうか。

言葉を変えれば、英語でも日本語でも、ネイティヴはほとんどの場合、表現の適否を「聞きなじみがあるかどうか」で決めるのです。

ちなみに日本語で主格の格助詞として「が」を使うか「は」を使うかは、他者との対比的関係を意識するかどうかで決まります。

しかしまさか、そんなことを考えながら「僕は」「僕が」を使い分ける日本人はいないでしょう。

英語ネイティヴも同じです。その英語表現に聞きなじみがあるかどうかで適否を決めるのが普通で、それを理論的にクリアに説明することは難しいのです。

ですから、ネイティヴから指摘を受けたときは、その内容について理論的な説明ができる日本人の英語教師に解説を求めるとよいでしょう。

そして指摘内容についてクリアに理解しておけば、ネイティヴから受けた指摘をそののちの英語学習に活かすことができると思います。

ネイティヴからの指摘やフィードバックは確かに重要です。しかし、それらのフィードバックへの向き合い方を知っておかないと、不必要に学習が停滞する恐れもあります。英語という言語の背景やネイティヴの間でも意見が分かれることがよくあるという事実を知った上で、ネイティヴからのアドバイスを効果的に活用しましょう
Information

さよなら、丸暗記!英語の本質を理解して、本当に使える英語力を!
KMUメソッドで英語の基礎力・運用力を高める大人のための英語・英会話スクール
初心者の学び直し英語から中上級者のBrush Upまで幅広いレベルとニーズに対応!
スクーリングコースの他、オンラインレッスンにも対応可!

【東京・新宿】英語・英会話JPED
入会説明会・無料英語セミナー・オンライン無料個別相談、随時開催中!