甘い言葉にご用心!「これだけ!」式英語学習法の注意点

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短期間で、効率よく、簡単に英語を身につけたい!英語学習者なら誰しも一度は、そんな思いを抱くものです。そんな思いに応えるように、世の中には数えきれないほどの「これだけでOK!」的な英語学習法なるものが溢れています。中には「なるほど」とうなずけるものもありますが、そのほとんどが学習者に甘い幻想を植え付け、やがて裏切るようなやり方で、筆者はそのような情報に触れるたびに沸々と怒りを感じます。今回は「たったこれだけ!」的な学習法に関する注意点について考えてみたいと思います。

1.あいまい記事には要注意!

ビジネスパーソンが読者に多い某雑誌。直近発売された号の特集は英語の学習法についてでした。

特集記事のトップバッターは「英語は3語だけで伝わる!」というもの。学習者にとってはいかにも魅力的なフレーズです。

この学習法の根底にあるのが「実際の英会話では難しい表現は必要ない」という考え方で、筆者のN氏も記事の中でそのように言い切っています。

そこでN氏は3語英語を提唱し、3語で話すためのポイントを10個挙げています。その中からいくつか挙げてみますと、

・受動態を捨てる
・現在形で「今」を大切にする(過去形を使わない)
・SVOOとSVOCの文型を捨てる
・仮主語It is …を捨てる
・シンプルな単文を作る

これら以外にもN氏は記事本文の中で「be動詞は主流ではない」「動詞はたった5つ覚えればいい」などなど、とにかく「シンプル」を指向したアドバイスをたくさん挙げています。

N氏の提唱する3語英語の根底にある「実際の英会話では難しい表現は必要ない」という考え方について、少し考察してみましょう。

「実際の英会話」とはどんな会話のことを指すのでしょうか?ビジネス会話でしょうか?日常会話でしょうか?旅行会話でしょうか?

そのことについて記事の本文でまったく触れられていません。どういうジャンルの英会話なのかを明示しないで、「実際の英会話」などと言うのはとても大雑把であいまいです。

「難しい表現」とはどんな表現でしょうか?N氏が記事の中で例に挙げている英文には、product、require、destinationなどの単語が出てきますが、これらは難しい表現ではないということなのでしょうか?どのレベルの語彙が「簡単」で、どのレベルの語彙が「難しい」となるのでしょうか?

N氏に限らず、「たったこれだけ!」的な学習法では、言葉の定義があいまいで大雑把なことが多いのです。これでは学習者に誤解を与えてしまいます。

この雑誌の同じ号には「読むだけ英語力があがる」「英検3級でも大丈夫!『雑談力』が上がる」などの記事があります。

「読むだけ」とありますが、音読ですか、黙読ですか?速読ですか、精読ですか?
「英語力があがる」とありますが、どんな英語力ですか?読解力ですか、リスニング力ですか?
「英検3級でも」とありますが、英検3級の文法力ですか、語彙力ですか?
「雑談力」とは具体的にどんな力ですか?相槌を打つ力ですか、話題を提供する力ですか?

すべてがあいまいでハッキリしないのです。

本当に効率が良く効果のある学習をしようと思えば、しっかりとターゲットを絞ることが大事です。どんな場面で、どんなレベルで使う英語を身につけたいのか。そのためには具体的にどんな力が必要で、具体的にどんなアプローチをすればよいのか。

もし皆さんが「たったこれだけ!」式学習法に触れる機会があるとしたら、その学習法の中で「内容」「場面」「レベル」「やり方」などについて具体的に明示されているかどうかチェックしてみてください。

もし具体的に明示されていれば、その学習法を参考にしてみる価値はあると言えるでしょう。

2.対象レベルを示していないものは要注意!

N氏の記事に話を戻します。N氏は記事の中で「be動詞は主流ではない。be動詞を避けて他動詞を使えば良い」と提唱しています。

その例として”I’m an English teacher.”と言うよりも”I teach English.”と言えば良い、”My hobby is playing golf.”と言うよりも”I enjoy playing golf.”と言えば良いと述べています。

たしかにこのレベルであれば、be動詞の代わりに他動詞を使って文を作ることは難しくないでしょう。

しかし「彼がそのプロジェクトの責任者です」と、少し英文のレベルを上げてみるとどうでしょうか?これを他動詞を使って表現する方法が簡単にひらめくでしょうか?

「彼がそのプロジェクトの責任を取ります」ということになるのでしょうが、「責任」という英単語はなんでしょう?「取る」はtakeでよいのでしょうか?すると、”He’ll take the responsibility for the project.”でいいのでしょうか?

そんなことを考えるよりも、「責任者」という言葉を「リーダー」などに言い換えて”He is the leader of the project.”と表現した方がはるかに簡単ですよね。

「たったこれだけ!」式学習法の多くが、どういうレベルの学習者を対象にしているのか明示しません。これも問題です。

当たり前ですが、英語のレベルによって取るべき学習アプローチは変わってきます。万人に当てはまる唯一絶対の学習法などないのです。

いやしくも「英語教師」を名乗るものは、学習者のレベル、学習傾向、学習環境などに応じて様々な学習法を提示できなければなりません。学習者のレベルを想定しないで「たったこれだけ!」と断言するのは不誠実な姿勢と言わざるを得ません。

もし皆さんが「たったこれだけ!」式学習法に触れる機会があれば、その学習法を取るべき対象者はどんな人かが明示されているかどうかに気を付けてみてください。

3.「発信」「受信」の区別がないものは要注意!

「たった3語だけで伝わる」とか「SVOOとSVOCは捨てる」とか「仮主語は捨てる」と言われたら、多くの学習者は勉強する単語数や文法分野を抑制することでしょう。

よしんばそれで、英語を「伝える」ことができるようになったとしても、「読み取る」「聞き取る」ことはできるでしょうか?

コミュニケーションは双方向です。こちらの想いを「発信」するには、相手の想いを「受信」できなければならないのです。

言うまでもなくネイティヴは「たった3語」では会話しません。SVOOやSVOCを使いますし、仮主語のitも使います。

自らが「発信」するときには使う単語や文法を抑制してシンプルにしても良いですが、相手の英語を「受信」するためには単語を多く知っているに越したことはありませんし、文法も幅広く知っておく方が良いのです。

「たったこれだけ!」式学習法の提唱者にはこの視点を欠いている人が散見されます。そして「これだけ」知っていれば「発信」も「受信」もできるような錯覚を学習者に与えがちなのです。

もし皆さんが「たったこれだけ!」式学習法に触れる機会があれば、その学習法は「発信」「受信」の両方に有効かどうかに気を付けてみるようにしてください。

英語の学習法に限らず、耳に心地よい言葉は現実の一面だけを切り取っていることが多いものです。そのような言葉を鵜呑みにしていると、やがて「こんなはずじゃなかった…」と後悔することもあります。そもそも「これだけ!」で本当に英語を使えるようになるなら、英語が話せる人は日本中、世界中に溢れることでしょう。たしかに「これだけ!」式学習法にも傾聴に値するものがあるのも事実です。しかし「これだけ!」式学習法に触れたときには、今回ご紹介したチェックポイントをぜひ参考にしてみてください
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