TPOを考えよう!不自然な英語・英会話表現とは?

【この記事は約6分で読めます】

英語も日本語もコミュニケーションツールである以上、TPOを考慮することが重要です。参考書や単語集、英会話学校のレッスンなどでも、「どんな場面で使うか?」を抜きにして英語・英会話表現を羅列している場合がありますが、場違いな表現を連発すると、相手に微妙な印象を与えてしまうことがあります。今回は英語・英会話表現とTPOについて考えてみましょう。

1.日常英語・英会話の基本は”Simple is the best”

不自然な英語表現として最もよく見られるのが、「必要以上に難しい言い回しをする」ということです。

英語・英会話学校などでは「こんな表現も知っておきましょう!」「こういう言い換え表現もあります!」などと一覧的に教えられることがあります。

もちろん、さまざまな英語表現を知っておくのは良いことですが、とりわけ日常英会話においてはシンプルな英語表現を使う方が、言いたいことを違和感なく伝えることができるようです。

日本語で考えてみるとそのことがよく分かります。

私たちは日本語で日常的な会話をするときに、あまり込み入った表現は使いませんよね。日本語ネイティヴは簡素な言葉遣いで日常会話をこなすものです。

これは英語・英会話も同じです。たとえば受験英語では必須とされる、程度や因果関係を表す「so ~ that構文」ですが、ネイティヴとの日常的な英会話ではこの構文と頻繁に出会うことはないでしょう。

筆者は試みに、アメリカの人気コメディドラマ”Modern Family”のSeason11の中で、どれくらいso~that構文が使われているかを数えてみました。

©ABC

3つの個性的な家族を描いた30分のコメディドラマである本作は、まさに日常英会話でよく使われる英語表現の宝庫ですが、Season11(全18話)の中では1度もso~that構文は出てきません

程度や因果関係を表している部分であっても、もっと簡単な英語表現を使っています。

筆者は「so~that構文など学ぶ必要がない!」と言いたいのではありません

アメリカの代表的なテレビ局であるCNNが平日に放送している”CNN 10”という10分間のニュース番組があります。

CNNのレギュラーニュースより、使われている英語がやや易しめなので英語・英会話の学習用としても活用されることがあるニュースです。

筆者が数えてみたところ、2024年3月4日~15日までの間に放送されたCNN 10の中では、so~that構文が4回用いられていました

このことから言えることは、英語・英会話の硬軟、TPOによって使われる表現は変わってくるということです。

そして、日常英会話の基本は”Simple is the best”だと言ってよいのではないでしょうか。

2.おびただしき数の人々に驚天動地?

さらに筆者が遭遇した不自然な英語の例を、具体的にいくつか挙げてみたいと思います。

筆者は先日、英語・英会話を勉強中の日本人の友人Aと、日本に住んで1年ほどになるアメリカ人の友人Bとの3人で木挽町の歌舞伎座に歌舞伎を見に行きました。

英語を練習したいというAの希望で、その日の会話はすべて「英語縛り」にしました。

AもBも歌舞伎を見るのは初めて。歌舞伎座がとても大きな劇場で、たくさんの観衆がいることに驚いたようです。

歌舞伎鑑賞のあと、近くのレストランで食事をしているとき、Aが次のように言いました。

I was astonished that there were numerous audiences in the theater.

その言葉を聞いたBはちょっと困惑したように、”Oh, OK…”と言いました。その反応に、Aも「あれ、変なこと言ったかな…」という表情をしていました。

せっかくの機会でしたから、私はAになぜ上記のような英語表現を使ったのか尋ねてみました。

するとAは「最近、英会話スクールで日本人講師から、surpriseの言い換えとしてastonishを習ったし、いつもa lot ofやmanyばかりでは単調な英会話になるのでnumerousやa considerable number ofを使うとよいと教えてもらったから…」と言いました。

そこでBに「Aの英語のどこが不自然だったか?」を聞いてみると、彼は「大げさで固すぎる英語表現だと感じた」と答えました。

Aの使った英語表現を検討してみると、まず“astonish”という英語は大げさすぎたのです。

Aに「astonishはsurpriseの言い換え」と短絡的に教えた英語教師に問題があると思いますが(もしくはAがちゃんと説明を聞いていなかった可能性もありますが…)astonishはsurpriseに比べるとかなり強い意味を持つ言葉です。

そもそもastonishはラテン語の「雷を落とす」という言葉に語源があり、まさに「雷に打たれたような衝撃・驚き」を表す英語なわけです。

歌舞伎座に人が多くてびっくりしたとしても、果たして「雷に打たれたような」レベルの驚きだったのでしょうか?

わざわざastonishを使わずに“I was very surprised”といった英語表現で充分だったことでしょう。

そして“numerous”という英語は固すぎたのです。

numerousやa considerable number ofなどという英語表現はかなり硬質で、日常英会話で耳にする機会は多くないでしょう。

シンプルにmanyやa lot ofという英語を使えば事足ります。

また”audiences”という英語も、問題があるというほどではありませんが、peopleのような簡単な英語で表現しても良いでしょう。Aが言った

I was astonished that there were numerous audiences in the theater.

という言葉を、そのニュアンス通りに日本語に訳すならば、

劇場におびただしき数の観衆がいたことは驚天動地の事態でした。

ということになるでしょう。日本語でこんな言い回しをされると私たちも「ああ、そうなのね…」といった反応しかできませんよね(または、失礼ながら苦笑してしまうでしょう…)。

つまりこのような場合、Aはごくシンプルに、

I was surprised that there were so many people in the theater.

という英語表現を使えば良かったわけです。

3.英単語や英語表現の語感やTPOを考慮しよう!

astonishやnumerousという英語を使うことが悪いというわけではありません

ただ使うときには、英語の言葉が持つ語感や、それにふさわしいTPOを考慮すべきだということです。

たとえば次のような英語文であればastonishを使っても違和感はないと思います。

I am astonished that he died suddenly of a heart attack. He appeared to be in good health when I saw him this morning.

「今朝会った時にはとても元気だったので、彼が心臓発作で突然亡くなったということに僕はビックリ仰天している。」

このような場合には驚きがかなり強いと思われますから”astonish”という英語を使っても問題なさそうです。

実際、筆者はアメリカ人2人、イギリス人2人、オーストラリア人1人の5人ネイティヴ英語スピーカーに、上記の英語文に違和感を覚えるかどうか尋ねてみました。

すると、5人すべてから「違和感はない」という回答を得ました。

またニュースなどの報道で次のような英語文が使われたとすれば、違和感はないでしょう。

The Expo had numerous visitors from all over the world, and the government concluded that it was a great success.

「世界中から多数の来場者を迎えることができたので、政府は万博が大成功だったという結論に至りました」

報道やプレゼンテーション、交渉や講演など、硬質な英語表現が好まれる場合にはnumerousなどを使っても不自然な印象を与えないと思います。

先ほどと同じ5人のネイティヴ英語スピーカーに尋ねたところ、やはり「違和感はない」という回答でした。

このことからも、単にastonishやnumerousという英語に問題があるのではなく、それをどのような場面で使うのかによって、自然な英語に聞こえるかどうかに違いが出ることが分かるでしょう。

たしかにビジネスなどでは、簡単な英語ばかりを使うと印象を損なうことがあるかもしれません。しかし日常英会話では使う英語はシンプルで良いのです。また、ビジネスシーンであっても、気軽なミーティングや仕事の合間の世間話などで、過度に難しい英語を使うとやはり不自然な印象を与えてしまうでしょう。大切なことは英語の持つ感覚をよく理解し、TPOを応じて使い分けること。ぜひ新しい言葉を覚える時には、その背後にある語感に注意してみてください。
Information

さよなら、丸暗記!英語の本質を理解して、本当に使える英語力を!
KMUメソッドで英語の基礎力・運用力を高める大人のための英語・英会話スクール
初心者の学び直し英語から中上級者のBrush Upまで幅広いレベルとニーズに対応!
スクーリングコースの他、オンラインレッスンにも対応可!

【東京・新宿】英語・英会話JPED
入会説明会・無料英語セミナー・オンライン無料個別相談、随時開催中!