英語・英会話の習得に英文法の勉強は必要?不必要?(2)
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1.英語の語順で理解すれば英文法は必要ない?
英語・英会話の習得において英文法不必要論を展開する人の中には、「Arrow English(アローイングリッシュ)」という学習アプローチを根拠とする人もいます。
Arrow Englishとは「英語を英語の順番のまま理解しよう」という考え方です。矢(arrow)のように後戻りせず、一直線に理解しようという姿勢からこのような名前がついています。
筆者はかつて、英文法不必要論を主張するある英語講師と公の場で議論したことがあります。
その方が英文法不必要論の根拠として持ち出したのもArrow Englishで、彼はその有用性を実証するためにアーノルド・ロベル著『がまくんとかえるくん』という絵本の一節を例に出されました。(作者と作品の名誉のために付言しておきますが、『がまくんとかえるくん』は大変心温まる名作です)
Frog ran up the path to Toad’s house.
He knocked on the front door.
There was no answer.
この英文を理解するやり方として、彼はホワイトボードに次のような日本語を書き出されました。
かえる、走った、あがる、小道、ガマの家
彼、ノックした、前、ドア
そこに、あった、ない、返事
それぞれの英単語に日本語を当て、つなげて考えていけば英文法などなくても理解できるというのです。
たしかになんとなく理解はできるでしょう。しかし、このアプローチには大きな問題点があります。
私たちが理解できるようになりたいのは子ども向けの絵本レベルの英語でしょうか?
私たちがマスターしたいのは簡単なあいさつ程度の英会話なのでしょうか?
ビジネス文書を読みこなし、必要があれば書くこともできるような英語力、自分の想いを必要充分に伝えられる英会話力なのではありませんか?
上に挙げた英文が英語の順番通りに理解できたからといって、果たして英文法を勉強しなくてよいという根拠になるでしょうか?
もう1つ例を挙げてみましょう。それぞれの英単語に日本語を当て、英語の語順で意味するところを考えてみてください。
I don’t know what he has to do with the accident.
私、しない、知る、何、彼、持つ、に、する、一緒に、その、事故
英単語は難しくないはずですが言わんとしていることが分かりますか?
この文は英文法をきちんと勉強している人でさえうっかり意味を取り違えてしまいます。
詳しい説明は割愛しますが、これは「私は彼がその事故とどういう関係あるのか知らない」という意味です。
たとえ簡単な英単語ばかりの文章でも、英文法をきちんと学習していないととんでもない読み違いをしてしまうことがあるのです。
ちなみに、上記のように英単語に日本語を当て順番に理解していくと言いうやり方は、本当の意味でのArrow Englishではありません。
英文法不必要論者の多くはArrow Englishを歪曲して理解し、その上で不必要論の根拠にしているのです。
英語を英語の順番のまま理解しようというArrow English(またはSlash Reading、Slash Listening)というやり方は、正しく用いればかなり有効なアプローチです。その有効性については筆者も理解できますし賛成もできます。
しかし物事には順序と段階というものがあります。中上級者になったのにいつまでもすべての英語をいったん日本語に変換し、日本語を介して英語を理解しようとするのは感心しません。
一方、英語・英会話学習の初期段階では英文法をきちんと学習し、分析的読解を行うというアプローチも不可欠なのです。
2.中学から英文法を勉強したのに英語を話せない?
英文法不必要論を唱える人たちの切り札と言ってもいいのが、「中学から英文法を勉強したのに英語を話せない人がたくさんいる!」という事実です。
たしかに中学から高校までの6年間、英語の授業で英文法を習います。しかし英語を駆使できる日本人、自由闊達に英会話できる日本人の割合はごくわずかです。
しかしこれもまた英文法の勉強が不必要だという根拠にはなりません。
英文法は英語・英会話の必要条件ではあっても十分条件ではないのです。
つまり英文法を学習し理解したからといって、それだけでは英語を話せるようにはなりません。
その英文法をいかに使いこなすかのアウトプット訓練が必要なのです。
その訓練をしないから英文法を勉強したけれども英語を話せるようにはならないという現象が生じるのです。
そもそも従来の日本の英語・英会話教育はインプット偏重でした。
英文法のルールを覚え、英単語を覚え、読解を重視するものであって、手にした知識を使いこなすアウトプットの場を充分に確保していなかったのです。
その揺り戻しのようにここ10年くらいはインプットを軽視し、学校で英文法をきちんと教えない風潮があるようですが、それもまた大変危険なことです。
インプットとアウトプットは英語・英会話習得の両輪です。
両方が上手く機能して初めて英語を使いこなせるようになるわけです。
学校教育の英語はアウトプットの訓練が機能していないので英語を話せるようにならなかっただけで、英文法を勉強したことが話せるようにならない原因ではありません。
3.従来の英文法教育にも問題が!
もっとも日本で従来行われてきた英文法教育にも問題が多々ありました。
「問題」どころか、それは学習者に余計な遠回りを課す罪深いものであったと言えるかもしれません。
たとえば「現在完了形の意味は『継続』『経験』『完了』『結果』の4つです」と機械的に教えられ、「仮定法では現在のことでも過去形を使います」と丸暗記を強いられているようでは、そう簡単に英語を使えるようになるわけがないのです。
受験英語での高得点というニーズがあるからとは言え、「『~と結婚する』は『get married to』が正解で『get married with』ではありません。これが決まりです!理屈抜きで覚えなさい!!」といったことを言われ続けている人に「英語・英会話を学ぶモチベーションを上げましょう!」などと言うのは無理な注文でしょう。
このような不毛な英文法教育が英文法不必要論という危険な極論を生み出したとすれば、英文法不必要論者たちを「いい加減なことを言うな!」と一方的に非難するのも酷な気がします…。
それでは一体なぜ英文法の勉強は必要なのでしょうか?「不必要論が間違っているから英文法は必要だ!」というのでは、主張として成立しているとは言えないでしょう。
次回の記事では「なぜ英語・英会話の習得に英文法学習は必要か?」という積極的な理由と、「効果的で望ましい英文法の学習とは一体どんなものなのか?」ということについて詳しくご説明したいと思います。
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