ただ「引く」だけじゃダメ?注意したい英語辞書の使い方

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英語の辞書は英語・英会話の勉強に不可欠の勉強ツールですが、「ただ英語辞書を引く」だけでは実力アップにつながらないこともあります。英語の辞書をあまりに頻繁に引くことが、英語力・英会話力の向上をかえって妨げることもありうるのです。今回は注意したい英語辞書の使い方について考えてみたいと思います。

1.辞書の使い方は勉強段階によって変化する

まず念頭に置いておかねばならないのは、英語辞書をはじめとする勉強ツールの使い方は勉強段階によって変化するということです。

習得している英語の語彙数が500語に満たない人と、すでに10,000語に及ぼうかという人では、英語の勉強に対するアプローチも勉強ツールの使い方も異なっていて当然です。

英語の勉強を始めた頃の勉強方法にいつまでも固執している人や、勉強の初期段階にあるのに中上級者と同じ方法で勉強しようとしている人もいるようですが、それは有効な方法とは言えないでしょう。

自分の勉強段階や進捗状況を考慮した上で、適切な勉強ツールの使い方をすることが、英語力・英会話力アップには欠かせないことを頭に入れておく必要があります。

2.初期段階ではとにかく英語の辞書を引く!

勉強の初期段階ではとにかく英語の辞書を引くことは意味のある大事なことです。未知の英単語が出てきたらとにかく英語の辞書を引きましょう。

英語の辞書なんて必要ない!英単語の意味は前後の文脈から思考・推測すればいい!」と主張する英語教師もいますが、この考え方には注意が必要です。

「思考・推測」はある程度の英語の語彙力があって初めてできることですが、勉強の初期段階では「思考・推測」に必要な最低限の知識がない人が多いのです。

たとえばフランス語の心得がまったくない人に、「”Est ce que vous avez le temps du boire un cafe maintenant?”はどういう意味ですか、「思考」してください!」と言ったところで、それは無理というものです。

「思考・推測」とは最低限の知識がなければできないわけですから、勉強の初期段階ではその知識を仕入れることが優先事項です。そのために英語の辞書を引くことが重要なのです。

それでは「必要最低限の知識(英語の語彙数)」とは何でしょうか?

筆者は中学で勉強する程度の知識を「必要最低限の知識(英語の語彙数)」と位置付けています。この程度の知識があれば(もちろん充分ではありませんが)、少しずつ英単語や英語文の意味を「思考・推測」できるようになります。

3.英語の辞書を引く前に「思考」する

勉強がある程度進んできたら、英語の辞書を引く前に「思考」することが大事です。未知の英単語や英語表現が出て来た時に、即座に英語の辞書に飛びつくのではなく、一旦立ち止まって考えてみることです。

思考することには2つのメリットがあります。1つ目はまさしく「思考力」を鍛えることです。私たちの母国語である日本語でもそうですが、すべての英単語を知ることは不可能です。知らない英単語が出て来た時にその意味を推測することが大切で、その「推測力」を鍛えるためには思考力を鍛えることが重要なのです。

2つ目のメリットは思考するという手間をかけることで英単語のインパクトが増し、英単語を覚えやすくなるということです。

英語リーディングの練習をしているときに知らない英単語が出てきたら、前後の内容から意味を推測してみます。

苦労すると思いますが、苦労すればするほど、英語の辞書を引いたときに「なんだ、そういう意味だったのか!」という感激があるはずです。

この感激が英単語に対するインパクトを増大させます。そしてインパクトが強ければ強いほど英単語の記憶定着率は高まるのです。

いきなり英語の辞書を引いてしまってはこの感激がないのです。感激がないということは記憶定着率も低くなってしまうということです。

このように英語の辞書を引く前にまず思考することがとても大切ですが、これは勉強がある程度進んできたあとですべきことです。最低限の知識がないのにこのやり方をしても時間が無駄になります。

また英語の勉強に割くことができる時間も考慮してください

たとえばTOEICを受ける人で、試験まであと2週間しかない人が「立ち止まって思考」というやり方をとっても効果は薄いでしょう。そんなときは思考を一旦脇に置いて、とにかく英語の辞書を引くことも大事です。

4.英語の辞書の定義にこだわり過ぎない

これは英文法学習が一通り終わった人が注意すべきことですが、英語の辞書の定義にこだわり過ぎないことも大切です。

もちろん私たちは英語の辞書の定義を頼りとすることが多く、それは悪いことではないのですが、英語に限らず言語は生き物です。時とともに変化します。

英語の辞書は毎年改定されるわけではありませんから、新しい英単語や新しい英語表現の使い方が載っていないこともあります。そんなときにいかに柔軟な姿勢を取ることができるかが非常に大切です。

つい先日、ある方からいただいた質問を例に考えてみます。その方が取り組んでいる英検1級の問題集でこのような文が出てきました。

It raises a lot of wondering about the theory.

その方は「wonderingの品詞がどうしても分からない。どれだけ英語の辞書を引いてもwonderingという名詞は出て来ないから、これは動名詞と考えるべきなのか?しかし動名詞には”a lot of”のような形容詞的な表現はつかないはずだけど…」というものでした。

英検2級あたりを受ける方からこの質問が出てくれば「いい質問ですね!」と答えるところですが、英検1級を目指している方からこの質問が出ると少し困ってしまいます。柔軟性がなさすぎるのからです。

たしかにwonderingを名詞と定義している英語の辞書は多くはありません(皆無ではありません、大きな英語の辞書では名詞と定義しているものもあります)。

しかし大切なのはそんなことではなく、a lot ofと形容詞的表現がついている以上、wonderingは名詞と考えれば済むと、それだけのことなのです。

「英語の辞書に名詞として定義されていないから、これは名詞ではない!」と意固地になってみても何の得もないのです。

勉強がある程度進んでくれば、英語の辞書の定義以外のことを文の前後から想定することも大切です。このような柔軟性を持って英語の辞書を使用することも大切なのです。

5.和英辞書、英英辞書を使うときの注意点

英語の辞書と言えば、英和辞書だけではなく和英辞書英英辞書もあります。

和英辞書は日本語から英単語を調べるときに便利ですが、注意したい点もあります。

和英辞書の多くは、日本語に該当する英単語を羅列的に並べているものが多く、品詞や発音、英語の例文などが載っていないものも散見されるのです。

一方、英和辞書は英単語について、品詞、発音、英語の例文、英文法的な説明など、解説が充実しているものが多くあります。

和英辞書で引いた英単語は、ひと手間かけて英和辞書で引き直してみるとよいでしょう。知りたい英単語について、より深く理解できると思います。

また英語の意味をより深くつかむために、英英辞書を使うよう勧められることがあります。

英英辞書を使うことには一定の効果があると思いますが、使い方にはポイントがあります。

それは「すでに知っている英単語の細かいニュアンスを知りたいときに限定して使う」ということです。

意味を知らない英単語を英英辞書で引いてみても、スッキリしないことがよくあります。回りくどい説明がされているからです。

たとえばビジネス英語で不可欠のrevenueという単語を英英辞書で引いてみると、このような説明が書いてあります。

Revenue is money that a company, organization, or government receives from people.

「revenueは会社、組織、政府が人々から受け取るお金である」ということですが、説明がくどくて分かったような、分からないような感じがします。

一方、revenueを英和辞書で引いてみると「収益・歳入」ときっぱりと書かれています。こちらの方がスッキリとして分かりやすいと思います。

そもそも英単語の意味を知らない場合は、英和辞書の方がはっきりと定義してくれていて分かりやすいのです。

一方、すでに知っている英単語の細かいニュアンスを知りたい場合は、英英辞書が効力を発揮することもあります。

たとえばseeとlookの違いがはっきりしない場合、英英辞書を見てみるとこのように定義されています。

When you see something, you notice it using your eyes.

If you look in a particular direction, you direct your eyes in that direction.

つまりseeはnotice(気付く・認識する)ことで、lookはただ単にdirect your eyes(目を向ける)ことだということが分かります。

このように、すでに知っている英単語の細かいニュアンスを知りたいときは、英英辞書を使うとよいでしょう。

6.紙の辞書とオンライン辞書はどちらが良い?

「紙の辞書とオンライン辞書のどちらが良いのか?」というご質問をいただくことがよくあります。

英語教師の中には「オンライン辞書はダメ!紙の辞書の方が優れている!」という人も多いようです。

その理由として、紙の辞書の方がオンライン辞書よりも解説が詳しいという人が多いように思われます。

たしかに英単語の用法や英文法的な説明については紙の辞書の方が詳しいと思います。しかし、だからと言って、一概に紙の辞書の方が優れているとは言えないと思います。

とりあえず英単語の意味をコンパクトに調べたいときはオンライン辞書で充分ですし、最近のオンライン辞書には例文などを豊富に載せているものも多くあります。

大切なことは、「何を知りたいか」によって使い分けることです。詳しい説明を求めるならば紙の英語辞書を使えば良いし、英単語の意味だけを知りたいのであればオンライン辞書を使えば良いのです。

また英語辞書を使うTPOも考慮して使い分ければ良いと思います。

仕事への行きかえりの通勤電車の中で勉強するときに、大部な英語辞書を持ち歩き、カバンから引っ張り出して英単語の意味を調べるなどは現実的ではないでしょう。

今回は辞書に使い方について考えてみました。英語辞書は学習者の強い味方ですが、使い方を誤れば英語力の向上を阻む最大の敵ともなりえるのです。今回ご紹介したポイントを参考にしていただき、英語辞書を有効に活用していただきたいと思います。
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